胃がんの発生にピロリ菌感染の影響あり
1994年に国際がん研究機関(IARC、WHO)はピロリ菌が胃がんの原因であると認定しました。さらに、2014 年の勧告では、ピロリ菌の除菌が胃がんの予防になること、そして血清ペプシノーゲンが胃がんのリスクの指標となると認められました。
目次
ABC検診(胃がんリスク分類)とは?
ABC検診(胃がんリスク分類)とは、血液検査でピロリ菌に対する抗体と、胃の炎症や萎縮の度合いを反映するペプシノーゲンを測定し、その組み合わせから胃がん発生のリスクを分類し評価する検診です。
※胃がん発見には画像診断による二次精密検査が必要です。
ヒトの胃粘膜に棲み、胃の炎症を起こす菌です。通常、胃の中は強い酸性を保ち菌は棲めませんが、ピロリ菌は特殊な酵素(ウレアーゼ)によってアンモニアを産生し胃酸を中和することで、強い酸性の胃の中でも生息が可能です。
胃粘膜の炎症と萎縮の状態を反映します。ほとんどが胃内に分泌されますが、1%が血中に漏れ出るため、血液検査で萎縮性胃炎を同定することができます。
※ABC検診(胃がんリスク分類)は胃がんを診断する検診ではありません。
ABC検診は現在から将来の胃がんリスクを評価する検診であり、ABC検診で胃がんが見つかるわけではありません。胃がん発見のためには、画像診断による二次精密検査が必要です。
胃粘膜の萎縮が高度に進行すると、HP抗体が陰性となることがあります。これはピロリ菌の自然排菌の他、加齢などにより抗体価が低下した場合が考えられます。 |
ピロリ菌除菌後症例は、ピロリ菌未感染群とは胃がんのリスクが明らかに異なります。また除菌によってペプシノーゲンの値は変化してしまい、ABCリスク評価にあてはめることは不適当であるため、E群として別扱いします。E群はピロリ菌の既感染者ですので、定期的な内視鏡検査等が推奨されています。 |
※H.pylori除菌治療の既往者はEを頭に付けEA群、EB群、EC群、ED群と区別した。EB群、EC群、ED群はそれぞれ症例数が少なかったため、それぞれB群、C群、D群に加算して示した。
出典 吉川 守也、乾 純和ほか:胃癌リスク検診の現況-高崎市住民検診における試み(臨牀消化器内科, 2013, Vol.28, No.8, 1117-1123 ©日本メディカルセンター)
A群と判定された場合でも胃がん発生のリスクを回避できるわけではありません。ピロリ菌感染以外の要因でも胃に病変が発生する場合もあります。自覚症状がある場合や家族歴がある場合は、内視鏡検査等の実施について担当医師と相談してください。
B〜D群と判定された場合は、内視鏡検査等の適切な精密検査と治療を行うことが推奨されています。ABC検診は胃がんのリスクを判定する検診ですので、判定後のフォローアップが重要です。
高齢者などでは抗体価が上がっていないだけでピロリ菌に感染していることがあります。HP抗体検査以外の方法(尿素呼気試験・抗原検出など)でピロリ菌の感染の有無を確認する必要があるとされています。
胃切除の治療を受けた場合はABC検診の対象にはなりません。胃全摘出でない場合は胃がんの発生リスクは回避できませんので、残胃のピロリ菌感染の有無を確認し担当医師と相談のうえ適切な除菌治療、定期的な内視鏡検査等を受けることが推奨されています。